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子宮内膜着床能(ERA:Endometrial Receptivity Analysis)検査とは、体外受精で良好な胚移植を複数回⾏っても妊娠しない、反復して着床が不成功となる症例に対して⾏う検査です。
反復着床不成功例では、子宮内膜が必ずしも準備が整っていない、着床可能な状態になっていない場合があります。つまり⼦宮内膜が受精卵を受け⼊れるタイミングが決まっているわけですが、その時間や時期には個人差があるため、適切なタイミングで胚移植を行うことで妊娠が可能になると考えられています。ERA検査では融解胚移植を行う場合、移植する日の子宮内膜が着床可能状態にあるかどうかを、遺伝子レベルで調べる事ができ、移植に最適な時期を判断することができます。ERA検査の結果より、20~30%近くの方が着床可能なタイミングがずれていた、という事が分かってきています。
前述のERA(子宮内膜着床能検査)をするために採取する細胞で次の検査も一緒に行えます。一度の検体採取で子宮内の環境が胚移植に最適な状態であるかどうかを判定することができるため、当院ではERA+EMMA+ALICEの3点セット検査(TRIO検査)を実施しています。
EMMA検査とは“子宮内膜マイクロバイオーム検査”と呼ばれるもので、子宮内の細菌叢をみる検査です。
近年の研究で、子宮内膜の細菌叢の存在が明らかにされ、子宮腔の菌共生バランスが崩れると、ARTの治療成績不良に関連することが示されています。
ALICE検査とは“感染性慢性子宮内膜炎検査”で、子宮内の細菌の中で特に慢性子宮内膜炎(CE)の原因となる細菌を検出します。
CEは不妊症の女性の約30%の方が罹患し、習慣性流産を引き起こしている患者様の場合には60%に及ぶと言われています。この検査により、微生物学的レベルで子宮内膜を評価し、慢性的な子宮内膜炎の有無を抱える患者様の臨床管理が可能となります。
インキュベーター(胚培養器)は、お預かりした胚を培養するための体外受精では欠かせない医療機器です。自然妊娠の場合、受精卵はお母さんの子宮内部で成長しますが、インキュベーターはできるだけその環境に近い状態になるよう設計されています。ARTではこの機器の設定や管理が治療成績に大きな影響を及ぼします。当院では治療成績の鍵となる培養環境の構築に関して、一切の妥協を排除して世界最高水準を目指し、タイムラプスインキュベーターを採用して厳格な管理を行っています。当院のタイムラプスインキュベーターには以下の特徴があります。
タイムラプスとは、時間(time)と経過(lapse)を意味する単語で、撮影において同一アングルで静止画を一定間隔で撮って並べ、動画として流す方法のことです。培養器にこのタイムラプス機能を付加することで、医師や胚培養士は常に胚の経時的変化を観察できるようになり、受精の状態を的確に把握することが可能です。
培養器の開閉を最小限に抑えられることから、温度やPH濃度を安定して維持することが可能となるため、最適な培養環境が提供できます。卵に対する不要なストレスを排除して培養を行うことが出来ます。
培養器とコンピュータを接続して、AIによる卵の解析が可能です。過去の膨大な培養データを基に、AIが客観的に卵の成育状況を解析し医師や培養士にデータを提供するため、より良好な胚を見極めることが出来ます。
EMMA, ALICE検査では、検出限界があった細菌培養や組織学的診断に代わり、子宮内膜の細菌群と感染を遺伝子学的に検査するものです。次世代シークエンサー(new generation sequencer:NGS)を用いて子宮内腔液に含まれる細菌の遺伝子解析を行い、通常の培養検査または、子宮鏡、病理学的検査では困難な子宮内細菌叢の正確な把握が可能となります。検査結果に基づいて治療を行うことで着床率や生児獲得率が改善する可能性がある、と言われています。
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