今回はZyMot(ザイモート)スパームセパレーターについてお話します。 まず、ZyMotについてお話しする前に精子調整方法の種類をご紹介します。 ①密度勾配遠心法・swim up併用法 ➁二層密度勾配遠心法 ➂単層密度勾配遠心法 ④遠心濃縮法 ⑤swim up法 ⑥遠心機を用いないデバイスによる調整法 などがあります。 この6つの調整方法における特徴は↓の表にまとめました。 各種精子調整方法における特徴 運動精子の回収精子への負荷死滅/非運動精子、デブリなどの混入対象症例作業工程費用密度勾配遠心 Swim up 併用法運動性が非常に良好で、成熟精子を選別できるが、回収量はやや少ない非常に高い非常に少ない運動精子数が多い症例非常に多い比較的安価二層密度勾配遠心法運動性良好で、成熟精子を選別でき、回収量はやや少ない非常に高い少ない運動精子数が多い症例多い比較的安価単層密度勾配遠心法二層よりは回収量は多いが、密度の低い未成熟精子も混入する非常に高いやや多い運動精子数が少ない症例多い比較的安価遠心濃縮法ロスが少なく回収できるが、未熟精子や運動性不良な精子も多数混入する密度勾配遠心法よりはやや低い非常に多い運動精子数が極めて少ない症例少ない安価Swim up法運動性が非常に良好な精子が回収できるが、回収量は少なく成熟性の選別は出来ない低い少ない運動精子数が多い症例少ない安価遠心機を用いないデバイスによる調整法運動性が非常に良好な精子が回収できデバイスによっては一定以上の大きさは除外できる 回収量はやや少なくなる傾向で、成熟精子の選別は出来ない低い少ない運動精子数が多い症例少ない高価 (デバイスによる) 当院で行っている調整方法は主に①と⑥になります。 まず①について、密度勾配遠心法・swim up法の特徴と言えば、精子の密度差を利用し 遠心分離機によって良好精子を濃縮・回収するということです。 しかし、この方法は精液を遠心分離することで、活性酸素が発生し、精子のDNA損傷(DNA断片化)が起こると考えられています。 それに対して⑥に分類される今回の話題のZyMotは精子の運動性を利用して、 メンブレンという特殊なフィルターを通過できる良好精子を回収する方法です。 従来法のような遠心分離は行わないため、遠心分離による物理的損傷がなく、運動性が良好な正常精子を回収でき、 精子DNA断片化の進行が軽減されるという画期的なアイテムです。 また、調整方法は密度勾配遠心法・swim up法と比べてはるかに簡便です。 ①まず、原精液を用意 ➁精液と培養液を注入 ➂37℃のインキュベーターで30分間保管 ④運動性が良好な正常精子がメンブレンを通って回収チャンバーに集まる この方法で回収した精子のDNA断片化率は低く、従来法に比べ、胚盤胞到達率、着床率、妊娠率などが向上したというデータが様々な国で報告されています。 ただし、従来法より精子の回収量は少なくなるため、以前は体外受精で受精できていた方でも、この方法を用いることで顕微授精の適応になる可能性があります。 当院では、ZyMotを使用し精液の調整を行った場合、顕微授精の実施をおすすめしています。 体外受精で良好胚盤胞を得られず、次回は顕微授精を行ってみようとお考えの方 従来の精液調整方法で良好胚盤胞を得られなかった方 是非使用を検討してみてください!