当院では11月より限定的に不妊検査のキャンペーンを行います。 そこでは「女性:卵巣機能検査」「男性:精液所見検査」の2つを対象にしておりますが、今回は「卵巣機能検査」についてお話したいと思います。 *「精液所見検査」についてはブログ内「精液検査について」を参照ください 検査概要 卵巣機能検査では大きく3つの項目を検査させていただきます。 採血によるLH、FSH、E2というホルモンの検査 採血によるAMHというホルモンの検査 超音波エコーによる卵胞チェック ①LH、FSH、E2について 卵巣機能の生化学的検査になります。脳下垂体と呼ばれる場所から分泌されるホルモンなどを月経開始3日目前後に採血、基礎値を測定します。LHは黄体形成ホルモン、FSHは卵胞刺激ホルモン、E2は卵胞ホルモンと呼ばれるものです。月経による適切な排卵や妊娠成立にはこれらホルモンの生理的なバランスが欠かせません。検査値の異常高値や低値からは、早発閉経や排卵障害などの疑いを見つける事ができます。 ②AMHについて AMHとは“アンチミュラー管ホルモン”の事で発育途中の小さな卵から分泌されています。女性の卵巣には生まれた瞬間には約200万個の卵が眠っていると言われておりますが、思春期の頃には約30万個まで減り、その後は月経と共に一か月に約1000個ずつ減っていきます。卵巣内の卵子は増えることなく減り続ける運命を背負っており、現在残っている卵子数をある程度推定する事ができます。卵の“質”を評価するものではなく、残っている“数”を評価するという点をご注意ください。 ③超音波エコーによる卵胞チェックについて 超音波検査によって子宮や卵巣の観察を行います。エコーは経腟プローブというものを使用します。ここから画像診断によって多くの情報を得る事が可能です。子宮筋腫や腺筋症、子宮奇形、排卵障害となる多嚢胞などのサインから不妊症に対するスクリーニングを行う事ができます。 これらの項目から総合的に現在の卵巣機能を評価致します。 卵巣機能が低下する原因 卵巣機能については年齢との関係があると言われていますが、機能低下には他にも幾つか原因が指摘されています。 原発性(遺伝性)による卵巣の機能不全 放射線治療や化学療法による治療履歴の有無 過度なダイエットや運動 卵巣嚢腫による炎症、子宮内膜症罹患による病変摘出 子宮内膜症は生殖年齢女性の10%に存在すると言われており、晩婚化や生活環境の変化によって増加傾向にあると言われています。内膜症性の嚢腫は卵巣機能へダメージを与える事が分かっており、罹患率の高い女性特有の疾患としては注意しなくてはいけません。また外科的な治療を受けていたとしても同様の事が考えられます。 一般的な定期健康診断では、身長・体重・視力・聴力・肝機能etc…これらについては検査項目としてありますが、当然生殖機能なんてものは検査項目には含まれません。 今回のキャンペーンが「自分の生殖機能について知ってみようかな」というモチベーションになれば幸いです。そしてその結果が自分自身のライフプランを考えるうえで、強力な情報になると考えております。