着床前診断にはPGT-SR、PGT-M、PGT-Aの3種類があり、今回はその中でもPGT-Aについて見ていきたいと思います。 PGT-A(Preimplantation genetic testing for aneuploidy)とは、体外受精によって得られた受精卵(胚)の染色体数の異常を調べることです。 ヒトの場合、23対46本の染色体をもっています。1~22対が常染色体といい、残りの2本を性染色体といいます。この時、染色体が1本少ないとモノソミー、逆に染色体が1本多いとトリソミーと呼びます。モノソミーやトリソミーであると着床しないあるいは流産や死産になってしまいます。 次に実際の検査方法を説明します。 検査方法 ①胚の操作 (初期胚時) 体外受精で得られた初期胚の透明帯に切り込みを入れ、1個の割球を生検します。 (胚盤胞時) 体外受精で得られた胚盤胞の透明帯に切り込みをいれ、5~10個の細胞を回収します。回収した細胞を生検し、胚盤胞自体は一旦凍結します。 ②染色体異常の有無を次世代シーケンサー(NGS)を用いて検査します。 ③結果は以下のように表示されます。 【正常な場合】 X軸:各染色体を1~22番及び性染色体XYを横に並べている 【異常な場合】 2番の染色体がモノソミー ④凍結しておいた胚を移植周期に合わせて融解し、移植します。 PGT-Aのメリット・デメリット メリットデメリット 移植1回あたりの妊娠率が高くなる 移植1回あたりの流産率が低くなる 妊娠するまでの時間が短くなる可能性がある 流産に対する身体的・精神的な負担が軽減される可能性がある 細胞を採取することで胚へのダメージがある PGTをするのにコストがかかる 産まれてくる子供の疾患リスクをゼロにすることは出来ない 検査の結果、移植できる胚がゼロである可能性もある 最後に PGT-Aは2015年から特別臨床研究として開始された新しい技術です。 現在では認定施設のみで実施され、適応条件に合致した方が対象となっております。細胞を採取するため、胚の侵襲的ダメージは避けられませんが、非侵襲的な方法も研究されています。今後新たなPGT-Aの技術も期待できるのではないでしょうか。