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院長ブログ
2020.09.15

不妊治療の保険適応の話題① 国民皆保険の問題

先日、「不妊・不育治療の環境改善を目指す当事者の会」の方々と遠隔でのミーティングをさせていただく機会を頂きました。私は一介のクリニック院長ではありますが、当事者の方々がどのようなことを感じられているのか、何を問題だと考えられているのか、今後どのようなことが必要となってくるのか、を共に考えることができたことは大変ありがたいことだったと思います。様々意見を交わしたのですが、ちょうど自民党の総裁選で不妊治療の保険適応が話題ともなったこともあり、私の考えを述べさせていただきたいと思います。かなりボリュームが大きくなると思われますので、何回かに分けてお話させていただきますことをご了承ください。

まず、保険診療について考えたいと思います。国民皆保険とは、一定の負担で誰もが医療を受けられるという、わが国が世界に誇る優れた医療制度であることは疑う余地は無いのですが、問題点が無いわけではありません。皆保険の前提である、「誰でも一定の医療が受けられる」ということは、裏を返せば、その医療を提供する医療機関や医師をはじめとする医療スタッフの技術が一定でなければなりません。しかしながら、医療技術は通常行っている診療レベルに依存しますので、日常的に多数の症例を扱っている医療機関の方がレベルは高くなると思うのです。これは、他の業種にも言えることではありますが、いかに高い技術を持っている方が居たとしても、めったに行わない事項は急にはできないのです。私が大学で腹腔鏡下手術を多数行っていた経験から、感じていたことを率直に申し上げたいと思いますが、例えば手術であれば、手術件数の少ない施設では次世代の教育も困難な場合も多いのです。最近は、手術動画を共有することができるようになったため、以前よりは改善されたとは思いますが、人口の多い都市部と地方での格差はそのような意味においても問題ではあるのです。

さて、この地方と都市部の格差のお話で象徴的なエピソードがあるので、ご紹介したいと思います。詳細は伏せますが、ある学会の認定研修施設の基準を決定する会議のことでした。それなりの手術件数が無ければ教育や指導もできないと考えられておりましたので、年間の手術件数を300件以上とする、という案に対し、地方大学の教授が異を唱えたのです。取りまとめていた中央の先生が説明していたのですが、「地方大学の教授をやってからものを言え!」と怒号が飛んだのを記憶しております。都市部には全国から患者さんが押し寄せ、予約が数年待ちになってしまうような病院もあります。一方で地方では、ただでさえ慢性的な人手不足にあえぎながら、少ないスタッフで全ての業務を行わなければならない病院もあるのです。そのうえ、認定研修施設になることができず、医局への入局者が減ってしまうのでは、地方の病院の存続も危うい、と危惧してのことだったのでしょう。これは極端な例かもしれませんが、都市部と地方のみならず、同様な“格差”が医療にも生じていることは事実です。ただ、 現場の医師がまじめに頑張れば頑張るほど、その声は政治に届かなくなるのかもしれません。しかしながら、本来であれば政治で考えていただきたいことだと思います。

国民皆保険の問題はまだまだあるのですが、今回は長くなってしまったので、次回、続きをお話したいと思います。